『チェ 28歳の革命』を観て学ぶ

そもそも資本主義の何たるかもようわからん自分がなんとなく社会主義、共産主義に対して良いイメージを持っていなかった、というか過去のモノみたいな印象にあるのはやっぱりこの国にいるからなんか。
それが正常に機能している国キューバ。革命後来日したゲバラのおかげで、現在でもヒロシマナガサキを教わっているなんてこともあり、今回の映画とそのために勉強したことで急に親近感が沸く。
グローバリゼーション、アメリカ金融市場主義という圧力が肥大化した時代に、狙ったように公開されたこの映画で、資本主義の限界を感じた人が革命にロマンチックなものを感じたりするんだろう。
しかしながらゲバラはゲリラ活動による革命を信じた人だ。通常の政治活動ではなく、武力行使によって打倒することでしか政治は変えられないという信念。それに対する警戒心、違和感はとうぜんある。キューバ革命はそもそもにあの時代背景であの人物だからできたってことを、最初に知っておくべきだし、そのゲバラだって国連総会のために出向いたニューヨークでたくさんの亡命キューバ人から「人殺し!」と罵声をあびるシーンがあった。
今の日本でそれだけの強靭な反体制への意志を持つ人がいるとはやっぱり思えないし、日本での革命はやっぱり起きてはいけない気がする。
格差社会、雇用問題、おおきなことだけど、それでもお上が決めてくれていることに慣れた僕らは、そういうものにNoと言っているだけで、少なくとも不条理な暴力に見舞われることなく生きることがゆるされるとしたら、それはそれで革命がおきることよりはいいんじゃないかと思ってしまうのは、自分が恵まれているだけなのか。
物騒な話じゃなくても、社会の価値観が崩壊することのほうが、犠牲者の数は多い気がするし。“変化を求め続ける”っていう現状を維持するのが、この国の性格にあってる気がする。冷めた見方でいるのはやっぱり楽だから。
逆にこの映画、ゲバラにどっぷり心酔して本気で革命を夢見る人がいるとしたら、それはそれで会ってみたい気もするけど。

彼(チェ)ほど映画の題材に向いている人間はいない一方で、彼に関する文献や活動は膨大にあり、彼はまた、あまりにも多くの人にとってあまりにも違う意味を持っている。

と、監督が語るように、今に公開されるタイミングに、特別なアジテーションの意図はないようだし、だいたい監督のソダーバーグはアメリカ人だ。
当時の戦いやゲバラのパーソナリティに憧れながら、歴史のストーリーとして楽しむものとしてみるだけで十分な価値がある、し、自分的には好奇心としてゲバラのことを詳しくしることが出来てよかった。
レイジのライブの後ろにある旗とか、ジョンが世界で一番かっこいい男と評した人とか、そういうことの意味をやっぱり知っておきたいし。