カミソリギターレディ

マシリト『カミソリギターレディ』がまもなく一般発売される。すでにライブ会場では先行発売中である。まずは、このジャケットのアートワークが素晴らしい。彼らが主催するレーベル、寄道部隊のCDはいつもジャケットの絵がとても良いのだが、今回はタイトル、内容共に完璧表現するばかりか、黒とマゼンタのコントラストが鮮やかで、個人的には一番好きだ。

 本当にVo.印藤さんの才能は、よくもこんな曲を作るものだと、いつも思わせられる。このミニアルバムにしても、徹底的にエモでせつないヴォーカリゼイションが、なぜだかメタル的サウンドにのせて(withハンパじゃない演奏力で)届けられる。

 リードトラックとなっている「IZASARABA」は一度聴いたら忘れられない瞬発力と、聴けば聴くほどハマっていく持久力という二つのキャッチーさをもっている。人の弱みというものは最高のエンターテインメントになるということを、印藤さんは地で行ってる人で、リアルで痛みのある歌詞を自ら柔らかくコーティングする言語感覚に勝れている。どんな歌詞かはここでは書けないが、このCDや楽曲のタイトルからもうかがえるとおり、一つのテーマを、あらゆる方向や方法で浮き彫りにしていく視点の広さがこの人の魅力だ。サウンドも緊張感のあるリフを中心に、美味しいところを的確に抑えるベースに自在に変化するドラミングが見事で、展開部ではいきなりX JAPANばりに16分の刻みフレーズから、1バースだけで半音上に移調したサビに戻る流れのスムーズさは、凄いを通り越してユニークですらある。ライブでもここは必見だ。

 ほかにも、泣きそうな声でエモ感全開に始まり、途中でいいなりヘヴィロックなフレーズに移る、東京のことを歌った「カラスノイローゼ」や、これも号泣必至の「後悔サイレント」など、マシリトのレパートリーでしかなしえない殺傷力のあるタイトル、そして楽曲が並ぶ。河原田的には、また一つ墓場に持っていく名盤が増えて、困っているしだいである。聴け!!

カミソリギターレディ

カミソリギターレディ