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■まず、内容はともかくとして、このジャケット・ワークが酷い。印刷屋入稿用のアタリ画像かよと思ったほどですが、これが洋楽アーティストのUtada式なのか?

 サウンドの方はなんだか想像どおり。というか想像してた以上に想像どおり。ティンバランドがプロデュースしている楽曲でさえもまったく洋楽的に聞こえず、むしろ『Deep River』のときよりも宇多田ヒカルらしい曲調に仕上がっているのは、これはもちろん彼女の才能でしょう。これまでと同じく宇多田作品として、普通に好感をもって聴けました。

 ただ、このアルバム・タイトルが意味するところを内容として目指したのであれば、それは微妙。

ひぐちアサおおきく振りかぶって』第1巻は、久しぶりにヒットなマンガ。名作と呼ばれる前作『ヤサシイワタシ』の心理描写の巧みさや、アフタヌーン誌上やamazonの客感想での大絶賛、単行本の帯に書かれた“絶対に面白い高校野球漫画”という強気のコピーなど、いろいろな動機により購入したのですが、もっと早くから読んでおけばよかった!

 弱気で卑屈な主人公エースと、それをとりまく個性豊かな部員たちの、今どき珍しい純然たる高校野球のマンガなんですが、スポ根モノのように努力・根性だけで終わらず、科学的な解説や1年生だけの出来たばかりの部でしだいにチームの輪ができていく感じ、個性的な監督の指導などなど、最初から魅せてくれます。スポーツものをまったく汗臭く見せずに描く力量は少年サンデーで連載していた柔道マンガ、河合勝利『帯をギュッとね!』を思いださせます。野球をまったく知らない人にオススメしたい。

 深い話を描いていた作家が突然メジャーっぽくて明るい話を描き、それでいてクオリティを落とさないでいられる懐の深さは、『五年生』の木尾士目が『げんしけん 』のような作品を描いたり、『ストリッパー』の山田玲司が『Bバージン』のような作品を描いたりした経歴を連想させたりもします。

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