赤灯えれじい 1 (1)

今年の講談社漫画賞、一般部門は「蟲師」が受賞。妥当というかなんというか。
ほかの一般部門のノミネート作品は「おおきく振りかぶって」「赤灯えれじい」「働きマン」「プライド」「舞姫」というラインナップ。

この中だったら世間の話題的に言えば圧倒的に「おお振り」が評価されるところなんだろうけど、しげの秀一森川ジョージ福本伸行という今年の個性的な審査員のフィルターを通すと「蟲師」の世界観というか独創性というか、もっと言や講談社的なところがウケたということだろうね。

それとも「おお振り」って腐女子に人気あるから受賞から外されたかな。それはないか。


さて、この中で自分的に最も押したいのは、あえて「赤灯えれじい」。
ヘタレフリーターの主人公が元ヤン美女への恋を成熟させていくストーリー。
ヘタレの恋というと「電車男」とか、フリーターの恋というと「NANA」とか連想されるけど、この作品の中ではら勇気を振り絞ってヒロインを痴漢から守るとか、売れっ子バンドのデビュー騒動に巻き込まれていくとか、そういう夢物語みたいな設定は一切捨てられていて、土着的でストリート感のある恋愛が展開されている。
生きるだけでも大変なのにその上で一人前の人間になるというのは、他人から見たらそんぐらい普通だろと思われることが--通常の物語の主人公はでは普通にクリアされている問題が--、本人にとって一大決心なことであるという描写に情熱が注がれていて、純愛というテーマの前に話をリアルにしようとする姿勢が、結果的にそのテーマに華を添えている傑作です。
てなわけでオススメ。

赤灯えれじい(1) (ヤングマガジンコミックス)

赤灯えれじい(1) (ヤングマガジンコミックス)