今井紀明「自己責任」

4dc09eb0.jpg 今年のフジロックフェスティバルにも行っていたという今井紀明さんの著書、題して「自己責任 いま明かす「イラク拘束」と「ニッポン」」を読みました。この本、実は彼の二冊目で、一冊目は「ぼくがイラクへ行った理由」というオザケン的なタイトルの本があります。内容はほぼ一冊目と同じでしたが、こちらのほうがイラク拘束事件前後の話題に絞られていて、テーマの取り上げ方が編集の作業ひとつでこうも変わるかというほど洗練されていました。

 帰国後の世間の風潮について触れるところでは、かなり重苦しいムード。「政府も憎いが、オレたち家族を巻き込んだ市民運動も同じぐらい憎いよ」と言う彼のお兄さんの言葉や、社会人として自立するまで市民運動には参加しないという言葉は、そうとうな怒りと決意の固さが感じられます。やっぱりこの人って強い。。

 人間に興味がある、と繰り返している今井さん。ベトナム解放戦争の戦闘員やアフガン人の連帯意識を表わしていますが、それと同じレヴェルで、対アメリカという構図から踏み出して、いやおうなしにイラクへ送り出されて死んでいったアメリカ兵への想像力にもカバーしていたら、もっと冷静で読みやすい本になったかも。ただ、彼が市民運動に純粋に傾倒していたことに関して、とやかく言ったりする連中にはそんなことすら理解できないでしょうが。

 膨大な知識と好奇心、そして正義感を持って行動しただけの彼が、突然拘束事件に巻き込まれ、自己責任を問われた答えとして「わからない」と語ることは、当たり前だと思いこそすれ、それこそ無責任だなんて思えません。

自己責任 いま明かす「イラク拘束」と「ニッポン」

自己責任 いま明かす「イラク拘束」と「ニッポン」