博士の愛した数式

■いつのまに変わったんだ? ハッピーマンデー法はんたーい!

■僕が子供のころ、自転車で10分ほど行ったトコロに、何故か土曜日にジャンプを売っているさびれた個人商店がありまして、昼前で学校が終わるとみんなで凄い勢いで自転車を漕いでその店をめざしたものです。薄暗い店内でばあさんが紙袋にいれて渡してくれる、本当は月曜にならないと買えないはずのジャンプには、まぶしいステータスを感じたのでした。わずか2日ばっか早いだけで、ねえ。

 大人(というような歳)になって、出版のルールみたいなのがわかってきた今、土曜日にジャンプを販売することがいけないことだとわかった今でも、やっぱりあの独特のときめきは特別なものがあるよなあ。たぶん、この「土曜日にジャンプを売っている隠れた店」っていうのは、全国どこにでもあったんだと思う。それで、そういう噂は友達どうしとかで広まったり後輩に教えたりとかして、気がつけば子供らの間では常識みたいになっているんだ。それで誰かがまたどっか別の場所でも土曜日に売ってるよ、とか発見してきたりして。

 ネットもメールも無かった時代にですよ。
 
 思えばドラクエの裏技とか、団地の屋上の侵入のしかたとか、ビニール傘の部品で自転車の鍵を開けるとか、チョコとガムを一緒に食べるとガムが溶けるとか、ファンタを鼻つまんで飲むとみんな同じ味とか、そういう今となっちゃ何の役にもたたない話の口コミで少年時代は埋まっていたような気がします。あれはあれで楽しかったなあ。最近の子たちはなさそうに見えるけどね。たぶん、今だってインターネットやってるより楽しいハズなんだけど。
 
 だからと言ってそんなことが少年犯罪に繋がっているなんてことは微塵も思いませんが、子供が本当に子供らしく遊ぶって、そういうアホなことに全力になることだと思います。

小川洋子博士の愛した数式』を読みました。役1年前に出されたヒット作ですが、なぜか図書館にあったのでハナっからバカにする気まんまんで読む。しかしこれがとても美しい作品でストレートに感動してしまいました。80分しか記憶を維持することができず、数字にしか興味を示さない「博士」とのコミュニケーションという、極めてファンタジックな設定でありながらも、著者の鋭く奇麗な言葉を歌う筆力と他者への愛情の豊かさが、違和感無くのめり込ませてくれました。言葉の一つ一つを噛み締めながらゆっくり読んだら、なんだかとっても疲れた。そういう本。『東京大学物語』というマンガの中で「人生で本当に役立つ学問は数学だけだ」というセリフがあったり、カリスマ受験講師の細野真宏が「数学は最も論理的な学問」と言っていたことを思いだしました。

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)