美味しんぼ (49)

ナンプラーを初体験した。
魚を発酵させて作るアジア圏ではメジャーな調味料で、ベトナムではニョクマム、中国では魚醤、日本ではしょっつる
味わうのははじめてだが、どんなものかはかなり前からしっている。
僕の食の知識の8割は『美味しんぼ』からであるのだが、ナンプラーについてもカナリ前から完全に雁屋哲に洗脳されており、結論から言うとどんなものも素晴らしい味に変えてしまう奇跡の調味料とさえ認識していた。

美味しんぼ』におけるナンプラーの初出はおそらく第11巻の「香港味勝負」。このエピソードは、山岡さんが香港で出会った見ず知らずの子供に突然ベトナムまでナンプラーニョクマム)をとってこさせ、その後の料理勝負では深海魚の目玉と唇だけをそのナンプラーにつけて食べさせるだけで満場一致の勝利をもぎ取るという、もう雁屋イズムが絶好調に暴走している、これぞこのマンガの醍醐味といえる回だ。

それ以降も、ここ一番のときにはどんな料理でも必ず出る奥の手として、常に最高の調味料として紹介されており、そして誰もが旨いといって味わっている。

そんなわけでずーっと憧れの調味料だったナンプラーであるが、今日は仕事帰りにタイ料理店に連れて行ってもらって、初めてお目にかかる運びとなった。
で、その連れて行ってもらった店っていうのが、なんていうか日本の中にある「タイ料理の店」というよりはもう、完全に「タイの店」というほどに遠慮がないタイっぷりだったのである。

頼んだ料理はどれも普通においしいのだが、いわく、そこからテーブルの上に置いてあるナンプラー、砂糖、酢、唐辛子の4つの調味料を組み合わせながら自分なりのタイ味を造っていくのが流儀だということで、まずは初めてナンプラーを肉だかエビだかにつけて食べてみた。


…………


子供の頃は団地に住んでいて、そのときに猫を買っていたのだが、缶詰とドライフードの2種類から毎日どちらを選んで………





はっ!


一瞬の既視感に襲われる。そんな味でした。



その後もいろいろとおいしかったんだけど、その4つの属性を組み合わせるオペレーションがけっこう難しくで、ご一緒したお二人はそれぞれ独自の切り口をさっさと見つけてんだけど、結局僕は最後まで「あれ? うーん?」つって色々試してました。でもそれが楽しくて、閉店時間までわいわいやってましたとさ。



体験は知識を軽々と超える。
美味しくて面白くて、軽くデジャヴな味。それがワタシのナンプラー
ナンプラー0.5×酢2×砂糖1×唐辛子の粉末0.2ぐらいがベストかな。
ホントどんな料理でも合うからすごい。雁屋イズム万歳。
店のおばちゃんが全力の部屋着、でもグリーンカレーをサービスで出してくれりと、客のことを考えてんだか考えてないんだかよくわかんないのもちょっと面白かったです。


■『美味しんぼ』でタイ料理といえば他には表題の巻。
この巻での富井副部長の台詞ひとつとっても
「この時代になって、タイ米を食べさせるような災難に会うとは思わなかった。細長くて、色が悪くて、嫌なにおいがして。そのまずいことといったら、本当に情けなかったな。去年の凶作で米がないのはわかるけど、タイ米を輸入するなんて政府もどうかしているよ。まずくて食えないものを輸入してどうするんだ」
等、雁屋イズムの凄まじいイデオロギーが暴走しています。

美味しんぼ (49) (ビッグコミックス)

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